各賞のご紹介

小熊秀雄賞 富田砕花賞
地球賞 更科源蔵文学賞
日本詩人クラブ新人賞


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第39回 小熊秀雄賞

主催 旭川文化団体協議会・小熊秀雄賞後援会
後援 旭川市・旭川市教育委員会

受賞詩集 水島美津江『冬の七夕』 土曜美術社出版販売

 
第39回小熊秀雄賞応募詩集(2005年1月から12月までの間に刊行された詩集が対象)から、選考委員会が4冊を候補詩集として選び出し、3月31日(金)(於・旭川市)で最終選考委員会が行われ、受賞詩集が決定した。

候補詩集
浮海 啓 『夜風を運ぶメモリー』(砂子屋書房)
吉田伸幸 『今届いた風は』(三重詩話会)
水島美津江『冬の七夕』 (土曜美術社出版販売)
山根千恵子『地球の影が横切ってゆくとき』(緑鯨社)


選考委員
高良留美子(長)、富田正一、山本 丞、文梨政幸、東 延江

『賞をいただいて 水島美津江』
 
『冬の七夕』に「小熊秀雄賞」という大きな賞を戴いて大変嬉しく思っています。数字と成果という企業の理想のなかでこころを生きようなんて非情であったのかもしれません。そんなルーティンのなかで、徐々に惚けていく母が愛おしく、母の懐と詩を書くことが私の居場所であり、心を癒してくれました。今では言葉を発せない母だが、「戦争はいやだ、イヤダ」と言っていたことを思い出す。それは戦争を体験して来た女の叫びのように今も耳元に響いています。戦争で悲しい思いをするのはいつも子供や女性、弱い者たちなのです。社会の中で光を浴びることもなく歴史のなかに埋もれてしまうような市井の人々、そんな人々が社会と歴史を作っていくのも事実です。そんな弱い者たちを忘れてはならないというメッセージを込めた詩集でした。お読みいただけたことはこの上もないよろこびであり、心から皆様に感謝申し上げます。

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水島美津江・略歴
アルチュール・ランボーに触発されて詩を書きはじめ「砂」「地球」を経て1995年個人誌「波」を創刊、現在「日本未来派」同人。詩集 1976年『蒼ざめた海』、1991年『ブラウバッハの花火祭』、1998年『白い針ねずみ』

第36回 小熊秀雄賞
主催 小熊秀雄賞後援会 旭川文化団体協議会 
後援 旭川市・旭川市教育委員会

受賞詩集 佐相憲一『愛、ゴマフアザラ詩』 

 
第36回小熊秀雄賞応募詩集(2002年1月12日までの間に刊行された詩集が対象)から、第1次選考委員(富田正一、山本丞、文梨政幸、東延江)により、後述の候補詩集10冊が決定され、第2次選考委員の木島始、高良留美子に委ねられ、4月7日(月)最終選考が行われ、受賞詩集が決定した。
 授賞式は5月24日、旭川市のニュー北海ホテルで行われた。


選考委員 木島始、高良留美子
『ゴマフアザラ詩人からの手紙 佐相憲一』

 小熊秀雄よ、君の詩碑を旭川の公園に見たのは、私の人生が暗黒だった頃。ほとばしる詩魂、人間愛と民族平等連帯、社会変革と詩界変革への情熱、ユーモアと優しさ。どんなに私は君の詩集に勇気をもらったことだろう。「書き続けよう」固く誓ったものだ。
 アイヌよ、今野大力よ、更科源蔵よ、河邨文一郎よ。偉大なる北の奔放詩人にちなむこの賞を頂いたことを大きな励みとし、ますます私はポップでディープで今日的な命の地球ラブポエジーを世界に発信して決意だ。 今日も大いなる海をゆくゴマフアザラシ達の命にエール。地球にエール。中東の罪なきこども達の命に連帯。戦争に未来はない!
 賞をもらったからといって急にエラぶるのではなく、この詩集に全国から沢山頂いた熱い共感の声を裏切ることなく、私は今日も世界民衆の一人でありたい。なあ、そうだろう? 小熊秀雄よ。 皆さん、ありがとう。


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佐相憲一・略歴
1968年、横浜生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。様々な職業を経験。ヨーロッパ、アジア、日本を放浪。現在は学習塾講師。17歳より詩作。詩集3冊。現在、詩人会議、日本現代詩人会、関西詩人協会、の会員。詩誌『すきっぷ現詩人』の代表を務め、大阪詩人会議『軸』では運営委員として編集と会報を担当。他に、『PO』『原爆と文学』などに参加。朗読会にも力を入れている。大阪市在住。

第30回 地球賞 (主催 地球社)
受賞詩集 森田 進・佐川亜紀共編                   詩を読む
『在日コリアン詩選集』(土曜美術社出版販売)

 
選考委員会は、平成17年9月4日(日)、東京・品川プリンスホテルにおいて開かれた。本年度は、推薦アンケートの結果、詩集14冊、評論・翻訳集2冊が選ばれ、論議の結果、受賞詩書が決定した。

選考委員
新井豊美(長)、石原 武、一色真理、新川和江、辻井 喬


候補詩集
北岡淳子『アンブロシア』(土曜美術社出版販売)、丸地守『痛位』(書肆青樹社)、柏木義雄『客地黄落』(思潮社)、島田陽子『帯にうらみは』(編集工房ノア)、なんば・みちこ『おさん狐』(土曜美術社出版販売)、林 立人『〈モリ〉』(花神社)、河津聖恵『青の太陽』(思潮社)、高橋喜久晴『情念論』(樹海社)、秋山公哉『夜が明けるよ』(土曜美術社出版販売)、奥 重機『囁く鯨』(書肆青樹社)、菊田 守『タンポポの思想』(待望社)、菊地敏子『ポキポキ』(花神社)、佐川亜紀『返信』(土曜美術社出版販売)、作田教子『耳の語法』(思潮社)


候補評論・翻訳集
森田 進・佐川亜紀『在日コリアン詩選集』(土曜美術社出版販売)、
北川 透『谷川俊太郎の世界』(思潮社)



『 「在日」が語っている 森田 進 』
 
「在日」を定義するのは不可能に近い。どのように定義してもこぼれてしまう大切な核がある。だからこそ今回の仕事があった、そして、在り続ける。具体的には、この詩選集に掲載されている詩人たちの営為と付き合っていただきたい。それはそのまま日本の近・現代史の実体を指し示している。詩と史のダブル・イメージに圧倒されるのだ。共編者の佐川亜紀さんがいなかったら、この仕事は纏められなかった。心から感謝している。


森田 進・略歴
1941年、埼玉県生まれ。同志社大、早稲田大卒業。現在、恵泉女学園大教授。韓国・韓南大客員教授(1978年度)、釜山・新羅大客員研究員(2000年度)。詩集『海辺の地方から』、『乳房半島・一九七八年』、『野兎半島』。詩論集『詩とハンセン病』。編著『クリスマス詩集』、『イースター詩集』、その他、韓国詩の編・翻訳がある。



『 世界性をもつ在日詩 佐川亜紀 』
 
思い返してみると、大学生のとき、在日韓国人青年の方たちの金芝河についての講演を聞いたのが、在日詩と韓国詩を知る始まりでした。この度、詩選集を編集しながら、改めて魅力と重要性を深く感じました。国際化と民族問題の時代に在日詩は新しい視点から注目されています。まさに「地球」的読解が進むとき、それを激励して下さる賞を思いがけず頂き大変ありがたく、作者・研究者・選考の方々のご厚意に感謝するばかりです。

佐川亜紀・略歴
1954年東京都生まれ。横浜国立大学卒業。1901年『死者を再び孕む夢』詩学社(第25回小熊秀雄賞・第23回横浜詩人会賞)。1993年『魂のダイバー』潮流出版社。2000年『韓国現代詩小論集』土曜美術社出版販売。2004年『返信』土曜美術社出版販売(第4回詩と創造賞)。
共著・連詩集『近づく湧泉』土曜美術社出版販売、『日韓「異文化交流」ウオッチング』社会評論社など。
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