各賞のご紹介

小熊秀雄賞 富田砕花賞
地球賞 更科源蔵文学賞
日本詩人クラブ新人賞


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第15回 日本詩人クラブ新人賞(主催 日本詩人クラブ)

受賞詩集 星善博『水葬の森』(土曜美術社出版販売)

 
2005年1月23日(日)、第2回選考委員会(於・神楽坂エミール)において、会員他のアンケート投票により高点を得た詩集10冊に、選考委員推薦詩集を加えた候補詩集12冊が決定。2月27日(日)、最終選考会(於・神楽坂エミール)で受賞詩集が決定した。

候補詩集
中村純『草の家』(土曜美術社出版販売)、高橋玖未子『アイロニー・縫う』(書肆青樹社)、佐川亜紀『返信』(土曜美術社出版販売)、星善博『水葬の森』(土曜美術社出版販売)、藤森里美『さすらいへの夢』(ゆすりか社)、杜みち子『象の時間』(書肆山田)、赤池ヒロ子『水路』(石風社)、斎藤恵子『樹■間』(思潮社)、八潮煉『La Francophilie((ラ フランコフーリ))』(土曜美術社出版販売)、柳原省三『海賊海域』(土曜美術社出版販売)、高橋紀子『ひとり』(本多企画)、藤井雅人『無限遠点』(土曜美術社出版販売)

選考委員
細野豊、諫川正臣、北岡淳子、鈴切幸子、溝口章、南邦和、吉田義昭

『原点への回帰   星 善博』

 
21世紀、たとえばインターネットの急速な普及によって、「世界」は簡単に手元までやって来るようになった。しかし、そうした合理的な時代にあって、家や墓や旧習を守るため、いまだに自分を犠牲にして生きている人々は世界中に数多くいる。私が生まれ、18歳まで過ごした土地は、まさにその象徴的な「場」であった。前詩集『けものすじ』は、虚構に虚構を重ねていくことで、そうした「場」の存在を書き残そうとしたものだった。だが、強すぎる虚構性は時に独り善がりに陥ってしまうことにもなった。今回の詩集『水葬の森』では、自分の内面の奥深くに眠っていた土地の姿とそこに生きた人々とを、多少の虚構を交えつつも、できるかぎり素直に描こうと努めた。ここに描かれた小さな世界は、けっして前近代の「おはなし」ではない。「おのれ」の原点に立ち返ること、そしてそこから目を逸らさないこと、それらを心がけた結果、立ち上ってきた世界である。

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星 善博・略歴
1958年、栃木県今市市生まれ。1980年、國學院大学文学部卒業。1984年より86年まで文芸誌「鮭■」発刊。1996年、詩集『けものすじ』刊。2004年、詩集『水葬の森』刊。高校生の時「中央文学」同人となる。その後「詩表現」「■」などの詩誌に作品を発表。1991年より「地球」同人。現在、春日部共栄中学高等学校教諭。





第15回 富田砕花賞
主催 富田砕花顕彰会    共催 芦屋市・芦屋市教育委員会

受賞作品 くにさだ きみ『壁の日録』 (土曜美術社出版販売) 

 
選考委員会は、2005年1月18日(火)、芦屋市で開かれた。
 公募の詩集94冊から平成16年12月2日(水)に候補作品推薦として13冊が選ばれ、討議の結果、受賞詩集が決定した。


候補詩集
後藤順『日本海かぶれ』、豊福みどり『日が落ちる時刻』、田村雅之『曙光 モルゲン・ローテ』、谷口謙『気配』、魚本藤子『晴れた日には』、原田勇男『何億光年の彼方から』、北川朱実『人のかたち 鳥のかたち』、岩崎風子『イボン』、くにさだ きみ『壁の日録』、吉川章子『■爛の書』、山田隆昭『座敷牢』、赤松徳治『やさしい季節』、木下宣子『ロシアの冠毛』

選考委員
伊勢田史郎、大野新、杉山平一、安水稔和

「伝わる」言葉への模索 くにさだ きみ

 詩が書きたいと思ったのではなかった。見たもの触れたもの。ハッとすれば書きカッとなったらそれも書いた。翻って見れば、味もすっぽもない怒りの塊を1ダース位詩集にした。慚愧という外ない。私は自分の詩を「古新聞の記事そのもの」と評したが、実は古新聞ほどのニュース性もなく記録的価値もない。おまけに書きたいことは洗浚い書いてしまうから余韻も余情もあったものではないのだ。
 そういう私も、古希を迎えて些かの失意を覚え始めた。半世紀の「古新聞」で世界は変らない。それどころか世界は願いとは逆方向を辿る。「イラク派兵」「憲法改悪」が現実のものになった時、自分の50年の表現が反古になって舞うのが見えた。書いていれば伝わる−−そんな甘いものではないのである。
 過分にも「富田砕花賞」という、身の丈を超えた賞を頂いたのだが、それによって私も私の詩も進化を遂げた訳ではない。「伝わる」言葉への模索は始まったばかりなのである。


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くにさだ きみ・略歴
1932年岡山に生まれる。本名中田喜美。岡山大学教育学部2年課程修了。中学校教員18年。総社市議4期。「黄薔薇」「裸足」「砦」「器」等を経、現在は個人誌「径」グループ誌「ミモザ」所属。「詩人会議」「岡山詩人協会」「中四国詩人会」「日本現代詩人会」各会員。詩集『けだもの考証録』『指話』『■の餌箱』『ミッドウェーのラブホテル』『写撃者』『罪の翻訳』『訴える』等。






第1回 更科源蔵文学賞

選考委員 原子 修 鷲谷峰雄 鳥居省三 小檜山 博
主催 弟子屈町図書館内 更科源蔵文学賞の会事務局

受賞詩集 武西良和 『わが村 高畑』 土曜美術社出版販売

『更科源蔵文学賞受賞に寄せて』
 受賞はうれしいの一言に尽きる。詩を書いたのはわたしだが、その材料を提供してくれたのはわたしの故郷である。故郷の山や川や田畑である。それはまた、かつての母の生き方であり父の生き方である。あるいは祖母の姿であり、祖父の姿である。また、故郷に生きる人たちである。これらが合わさった詩集という形での言葉が評価されたことが何よりもうれしい。 また、こんな環境をつくってくれた今の家族の励ましも忘れてはならないと思う。受賞は感謝することを促してくれる。
武西良和・略歴
1947年 和歌山県海草郡美里町高畑に生まれる。和歌山大学教育学部卒。詩集『水中かくれんぼ』(1995年)など。
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