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■ 新・日本現代詩文庫70『尾世川正明詩集』
尾世川正明/著

妻が苺を呑みこむと / 私は彼女の胃袋を覗きこむ
暗い臓器の奥に赤い実があるのをみて /わけもわからぬ安堵をおぼえ
私も苺をかんだりする   (「愛」より)

 得てして詩人は「自分探し」という蜘蛛の巣に捕らわれがちである。しかし尾世川さんは「僕」「私」を極力抑えている。自分探しより他人探しに眼目を置くことが多い。主語が不在なのはそのせいだ。これは「個」からの脱出に他ならない(望月苑巳・解説より)
 尾世川正明の詩は、直接的に現実事象と接点を持ったり、あるいは隠された現実を心理学的に剔抉するという文明批判的な手法をもたない。そこにあるのは、この宇宙全体を組織するものは何か、その自然の一部であるわれわれの生命の根源とは何か、その内実を詩人特有の直感力でポップに表現しようとする鋭い感性である。(中村不二夫・解説より)
ISBN978-4-8120-1783-8  C0192 定価1470円(5%税込)
■ 新・日本現代詩文庫71『岡隆夫詩集』
岡 隆夫/著

ひょいと乗った〈生〉のバス 銘々ボタンを押し/自分のバスストップに降りてゆく
ぼくはいつぼくのボタンを押せばいいのか
いやワンマンが促してくれよう〈終点ですよ〉 (「ひょいと」より)

 菅笠冠ってズボンをまくり、百姓踊りを演じてみせる好漢岡隆夫の飄逸さと、俊英な英文学者にしてエミリー・デォキンソン研究で知られるかの古川隆夫教授の重厚さと、どちらがほんものと戸惑うことが、これまで二度三度どころではない。(中略)岡隆夫は詩の芸人のように変幻自在に不毛な情況に踏み込んで行く。篤実なプロフェッサーは時に風刺のマントを翻せずにおれないのだろう。比喩的にいえば、詩人岡隆夫は古川隆夫教授のパラドックスとして規範を意識的に逸脱していく。ニュークリティシズムのセオリーのままに。(石原 武・解説より)
 岡は自分がおこなっている小麦作り、ふどう作り、稲作りをはじめとする農作業に誇りをもっている。他の人が意識していなかった部分にまで目を向けておこなっているという自負が感じられる。(中略)岡の詩は具体的なことを詩いながら実は非常に抽象的な理念のようなものを現そうとしていると思える。詩人である岡隆夫の農業は理想を伴わなくてはならなかったのだ。(瀬崎  祐・解説より)
ISBN978-4-8120-1773-9  C0192 定価1470円(5%税込)

■ 新・現代詩人論叢書3『三島由紀夫論―その詩人性と死をめぐって』
佐久間隆史/著

三島は、少年期詩を書いていた自分を否定、そしてその後、自分は人生を知った作家になったというが、果して彼は自己の詩人性を脱皮、人生を知った作家になったのだろうか? 彼の魅力はもちろんのこと、その死さえその詩人性より生じているのではないのか? この書は、三島の詩人性に着目、そして彼のひとと文学を論じた注目の書である。
ISBN978-4-8120-1760-9  C0395 定価2625円(5%税込)

■ 詩集 『ここに小さな海が生きている』
小野ちとせ/著

渇いている、すべての人へ。
私たちは明日にも消えてしまう、ヒトという水たまり。
逆立ちしてみるといい。
からだにある水の重さがわかるから。 (一色真理)

ISBN978-4-8120-1763-0  C0092 定価2100円(5%税込)

■ 詩集 『水の声』
硲 杏子/著

 水の詩人、硲杏子さんの〈水〉は「いのち」「女性(母性)性」「無意識」などの象徴性を豊かに溶け込ませながら、「管」という身体と楽器の両義性を持つイメージの中を流れていく。読者はその音楽的な言葉のリズムに、自分の身体全体を楽器のように共鳴させながら読み進むことになる。硲さんの作品が大きな説得力を持つのは、きっとそのためなのだ。
(一色真理・解説より)
ISBN978-4-8120-1757-9  C0092 定価2100円(5%税込)

■ 詩集 『思い出積木』
小樅のりこ/著

この詩集では、愛が多く語られているが、愛とは、白川静氏の『字通』に據れば人が振り向いた象であると。赤ちゃんを寝かして立ち去ろうとして、つい振り向いてしまう、その姿といえば、恋人と別れるとき、明日又会えるのに振り向いて手を振る、このことは誰しも経験していよう。人間とは何と優しい又悲しい存在か。(比留間一成)
ISBN978-4-8120-1753-1  C0092 定価1575円(5%税込)

■ 詩集 『人形液』
西村則昭/著

太陽のうらうらは真夜中。笑顔のうらうらは壜いっぱいの毒。
では、詩人の言葉の裏々は?
どうぞ召し上がれ。
極上のおいしい「うそ」はとびきりの「ほんとう」の味がします。
(一色真理)
ISBN978-4-8120-1723-4  C0092定価2100円(5%税込)

■ エリア・ポエジア叢書2 『生命播種』
入田一慧/著

心の渋皮を剥こう
那須野が原にふと死の影が落ちて、日差しが翳ることがある。
そんなとき一粒の種子を播くのが詩人の仕事だ。
この手に命の震えがきらめいているうちに。

ISBN978-4-8120-1747-0  C0392 定価1890円(5%税込)

■ 詩集 『埋火』
高橋紀子/著

高橋紀子は内部に火の言葉を持つ。火はいつも孤独だ。
いのちある限り、自分以外のものをすべて焼き尽くしてしまうから。
言葉はいつも裸だ。それは自分のすべてをさらけ出さずにいられないから。
その痛みに耐える者のみがひとり、詩人と呼ばれるに値する。(一色真理)

ISBN978-4-8120-1744-9  C0092 定価2100円(5%税込)

■ エリア・ポエジア叢書3 『六月のサーカス』
木村恭子/著

その子もかなしい草なのだろう
どこか遠くの古い本の中の染みのような街に、きっともう一人の「私」がいる。
キリン堂薬局や細謹舎という本屋の前で、
雨のように煙る夕日に濡れて立っていた「私」のことを、
私はけっして忘れない。
ISBN978-4-8120-1748-7  C0392 定価1890円(5%税込)


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