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■ 21世紀詩人叢書・第Ⅱ期37 『愛のかたち』
永井ますみ/著

 永井ますみは、いままでの詩人として集積してきた営みの、総括と整理の時期に入っているようである。目覚しい活動である。その繁忙の日々の作品群が、いわば総括されるなかでの一冊として、この『愛のかたち』の刊行をよろこびたい。(じきはらひろみち・解説より)

ISBN978-4-8120-1781-4  C0392 定価2100円(5%税込)

■ 21世紀詩人叢書・第Ⅱ期38 『水源の日』
名古きよえ/著

現代人は利便で快適な生活と引換えに、家族や親族の親密な人間関係、地域共同体の互助精神などの精神的価値を失ったことに気付いていない。
 名古きよえの『水源の日』には、大半の日本人が失って久しい故郷の原風景がまるで水彩画のように再現されている。(中村不二夫・解説より)

ISBN978-4-8120-1782-1  C0392 定価2100円(5%税込)

■ 新・日本現代詩文庫65 『新編濱口国雄詩集』
濱口国雄/著
罐詰の空罐に石を入れ
春/夏/秋/冬/カンカラ カラロン/カンカラ カラロン
心を振って歩いているのだ/喧しいか (「自画像」)

 彼は今後も労働者階級の中の、もっとも反逆的モラルの詩人として、あくまで自らの革命思想をつらぬき、苛烈な現実変革のたたかいを闘う労働者と共に、たたかう詩人としてありつづけることは確かである。そして彼が私たちの心に残した「便所掃除」の美しい人間のイメージは、階級のたたかいがつづくかぎり私たちの脳裏から去ることはおそらくないに違いない。(中村慎吉・解説より)
濱口にとって「詩」とは、みずからを労働者としてつくりあげる武器だったのである。思想をとぎすますように、かれはことばをみがいてきた。かれは「詩」を書くことによって自己を変革し、現実を認識し、たたかう意志を強め、たたかう方向を見定めてきた。そしてそれを仲間に伝えてきた。語の本来の意味における文学――思想としての文学が、こうしてかれの「詩」を生みだしたのである。(武井昭夫・解説より)
ISBN978-4-8120-1790-6  C0192 定価1470円(5%税込)

■ 新・世界現代詩文庫10 『リルケ詩集』
ライナー・マリア・リルケ/著 神品芳夫/編訳

だれが、わたしが叫んでも、天使の序列から
わたしの声を聞いてくれようか。もしも
天使のひとりがわたしを胸に突然抱くとしたら、
その強烈な存在のため、わたしは滅びてしまう。なぜなら美は
われわれが辛うじて堪えうる恐ろしいものの発端にすぎないから。
(「第一の悲歌」より)
世上リルケは最も詩人らしい詩人といわれて人気を集める一方、フランス象徴主義からもドイツ表現主義からも切り離された特異な詩人という扱いを受けてきた。五歳まで女の子として育てられたとか、祖先が貴族の家柄だったという証拠を探し回ったとか、庶民の暮らしの哀歓にまみれたことがないという事実は、現代の詩の読者には縁遠いものに思われた。しかしリルケは古代ギリシャからパウル・ツェランまで、チェコから日本まで、幅広い文化圏とつながりをもっていることは注目に値する。彼には孤独を生き抜く孤立した詩人というイメージが付きまとうが、彼の詩はひとり聳える高い山の頂ではない。むしろ、およそ詩が進路を見失ったときに一旦立ち返ってみるべき近代詩の原点の一つといえるのではないだろうか。
(神品芳夫・解説より)
ISBN978-4-8120-1789-0  C0198 定価1470円(5%税込)

■ 新・日本現代詩文庫73 『葛西洌詩集』
葛西洌/著
真赤な絵具でなぐり描きされた
巨大な鳥のこころを背負いながら
どこまでも歩いてきた。
とどまることを忘れた記憶の鈴を
汗ばんだ手に握りしめて
これからぼくは
約束された一ツの合図を探り出そうとしている。
(「帰る」より)
 津軽の地霊と一体化した葛西は、いまもなお〈北〉に向かって成熟しつづけている。その最終的な到達地点がどこになるかは、おそらく詩人自身も含めて誰にもわからない。だが、それが日本現代詩の抒情の極北をめざしていることだけは間違いない。(郷原宏・解説より)
これまで戦後現代詩が目指していたのは、敗戦から安保、東西冷戦の終焉、そして現在のアメリカグローバリズムの支配と、疎外された社会状況からの言語的回復であった。この文庫を通読して、葛西洌もまた、その中心的存在として一翼を担ってきた詩人であることが証明できる。(中村不二夫・解説より)
ISBN978-4-8120-1786-9  C0192 定価1470円(5%税込)

■ 詩論集 『ポエジーその至福の舞』
三田洋/著

もしかしたら、私たちは詩を読むとき、ある過ちを犯しているのかもしれない。詩の「核」のようなものを丸ごと捉える直感的批評の欠如――。優れた詩歌の内奥には何ものかが棲んでいる。それが私たちの心身にとり憑き、風を吹かせ、その詩作品の虜になっていくのだ。そのとき、深奥から初めてポエジーが姿を表すにちがいない。

ISBN978-4-8120-1759-3  C0095 定価2100円(5%税込)

■ 新・日本現代詩文庫72 『野仲美弥子詩集』
野仲美弥子/著

大根はかがやき /白菜は茂みの中に
ピストルをかくして待つ  /血と思考を抜かれた魚肉類は
白い皿の上に /ひとびとの嗜好のかたちに横たわってみせる
(「一月の商店街」より)
 女性詩と言えば一般に〈愛〉が主流であるが、その基盤にある家庭を題材としたものは軽く見做されがちだった。それが偏見であることが野仲さんの作品を通読してよくわかる。家という日々の情念の場が理念で詩的発展を遂げていて、日常詩とは似て非なるものである。(こたきこなみ・解説より)
以前から、野仲の詩には特別の興味と期待を抱き続けてきた。野仲の詩のモチーフは人一倍生活に密着した身近なものばかりでありながら、人間の内面を抉り出す詩が多い。その抉り方も、抉る刃物(感性)が鋭いからであろう、発見があり、痛快でもある。読後、その切れの鋭さに堪能しほくそ笑むことしばしばである。(丸地守・解説より)
ISBN978-4-8120-1785-2  C0192定価1470円(5%税込)

■ 詩集『天使のいない場所』
石川厚志/著

ワルツを踊るようにいのちの輪がめぐっています。くるりくるり。生きることは終わりのないリフレイン。ぐるりぐるり。世界は途切れることのない問いのつらなりです。ほら、耳をすましてみませんか? 心に翼を持つ詩人が、甘いバリトンで歌っていますよ。天使のいない世界のほろ苦さを――。(一色真理)

ISBN978-4-8120-1771-5  C0092  定価1500円(5%税込)

■ 新・日本現代詩文庫74 『只松千恵子詩集』
只松千恵子/著

私は待っている
ポトリと白い郵便が
ポストに落ちる音を

私は待っている
胸に棲みついた苦悩を
一瞬の間に洗い流してくれる夕立ちの来ることを
(「待つ」より)

 只松千恵子さんのシルクロードを描く詩篇を前にして、その砂漠の実感のゆたかさときびしさに驚いている。私の場合は戦場の砂漠だったが、只松さんの場合は旅びとの眼でみた砂漠である。しかし、その視線の、なんと透徹した力を持っていることだろう。(伊藤桂一・解説より)
政治家であられた御主人の選挙応援スピーチもこなされた経歴はもとより、世界旅行、紀行など、好奇心いっぱいによる理解の広さを目にする事ができる。そこには、自ずから物語性があり、狭い詩人の観念の先行から広い視野への展開があり、メソメソした女性でなく、果断の断ち切りは男性を思わせる趣きもある。(杉山平一・解説より)
詩集としてあつめられた只松さんの作品の群れは、これを通読するとき、一筋の川の流れを見るが如き豊かな印象、を受ける。この只松川は、自ら流れたいように自由自在に流れて、ほとんど、些事にこだわることがない。(宮澤章二・解説より)
詩人・只松千恵子は、宮沢賢治、ルオーにも似て、生涯かけて作品を手直し続けている。ということは、永遠の未完成こそが、あるいは現在書いている作品こそが作品である。どの詩集も詩集刊行後にもなお手を入れる。だから読者が手に取っているこれらの詩篇は、最新版というわけである。(森田進・解説より)

ISBN978-4-8120-1787-6  C0192 定価1470円(5%税込)
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