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■ 新・日本現代詩文庫75『鈴木哲雄詩集』
鈴木哲雄/著

樹も
叫びたいときはあるのだ
歳月の風に
かたい表皮をめぐらし
内へ内へと蓄えていった
沈黙

樹だって
裂けたいときはあるのだ
「樹も」より

 日頃、鈴木哲雄と接している時、怒りや苛立ちの表情を見せることなく、静かな樹木のように自分の立つ位置をいつも心得ているようである。烈しい憤りや嘆きも制御して、些かも素振りに現すことはないが、自分自身の生き方には容赦することはなかった。(中略)この一巻は慰藉の手も届かない痛みに、心血の思惟を傾け、日影月影を踏みながら人間に優しいまなざしを注ぎ、痛みを分かちあえる人に深々と語りかけてくる。
(柏木義雄・解説より)

 鈴木哲雄の詩を総括すると、詩人の鋭敏な感性が受難に結びつくことによって、この世に言葉で何か証しを立てようとしているのではないか。思えば、キリストの受難も福音書が作られていなければ、こうして二千年も語り継がれてはいない。さらに、キリスト教を世界に広めたパウロの存在も考えなければならない。同じように、同じように、ここに鈴木が記した空前絶後の魂の記録、これこそ、逆説的に人類の遺産の一つとして後世に語り継がれていかなければならない。
(中村不二夫・解説より)

ISBN978-4-8120-1803-3 C0192 定価1470円(5%税込)

■ 詩集『海の時間』
荒木茂子/著

勇者は山を愛し、知者は水を好む、といわれるが、まさにこの詩集は生と死をみつめて、その甦りをさぐっている。これを追求する姿勢は、哲学的で絶えず人間存在について語りかけてくる。
(比留間一成・添え書きより)

ISBN978-4-8120-1797-5 C0092 定価2100円(5%税込)

■ 詩集『ブリキのバケツ』
沢村俊輔/著

「ブリキのバケツ」は魔法のオモチャ箱。中を覗くと、父母と子供のぼくがいる。
ザリガニ、アメ玉、ランドセル、鯉のぼり、海水浴と父の腕、毬栗と母、黄金バットのいる公園、団地の鈴木くんち、忘れ物をする吉田くん、魔法の握手、運動会のぼくなどが次々ととび出してくる。面白く楽しい世界が展開するが、中には哀切なものもある。
詩集『ブリキのバケツ』は、若々しく新鮮なことばで大人と子供の世界を自在に描き、「ブリキのバケツ」「こいつ」「角」「魔法」など注目する作品も多い。また、亡き父への鎮魂詩集でもある。
沢村俊輔待望の第一詩集である。
(菊田守)

ISBN978-4-8120-1808-8 C0092 定価2000円(5%税込)

■ 新・世界現代詩文庫11『ヌーラ・ニゴーノル詩集』
池田寛子/編訳

彼女が目を覚ますと
魚の尾っぽは
なくなって
ベッドの中にあったのは
ふたつのながくてひんやりしたもの。
あなただったら――海草の枝かしら それとも
肉の切り身かしら なんて思うかも。
「病院の人魚」より

 イギリスやアイルランドには人魚の出てくる文学作品が少なくないが、ニゴーノルの作品はその斬新さで異彩を放っている。三十七篇もの詩を人魚に捧げた詩人は他にはいまい。しかもニゴーノルは従来の人魚の役割に問い直しを迫り、革命を仕掛けている。人魚世界を紡ぎ上げているのは、彼女の母語であり少数民族言語の一つであるアイルランド語である。アイルランド語以外の言語を通して人魚の声に耳を澄まそうとする読者にとっても、このことはなにがしかの切実な意味を持ってくることだろう。
(池田寛子・訳者覚え書きより)

ISBN978-4-8120-1791-3 C0198 定価1470円(5%税込)

■ 詩集『OBBLIGATO』
和泉田かおる/著

 わたしたちは、世界というものがさまざまな存在によって出来ていると考える。
 しかし、その存在の諸相は、つねに変化して止まない。そうした変化を、わたしたちは時間の経緯として把握するわけだが、そうだとしたら、世界とは時間を潜在性とする存在によって出来ているのだと言うことができるだろう。
 この『OBBLIGATO』という一冊の詩集が語ろうとしているのは、まさに、そのようなことである。
(城戸朱理・解説より)

ISBN978-4-8120-1800-2 C0092 定価2100円(5%税込)

■ 詩集『川沿いの道』
なべくらますみ/著

いつどの時代にあっても、
川は人々の生活の上にあって休むことなく時を刻んできた。
なべくらますみは自らの記憶の川を丹念にたどることで
人々の生活や町の姿を再現してみせる。
なべくらの身体を流れる川を遡行することで、
私たちの胸にはいつも身近に在った
あの懐かしい生活の温もりが戻ってくる。
日本と韓国の海峡にことばで橋を架けてきた詩人の新詩集。
(中村不二夫)

ISBN978-4-8120-1794-4 C0092 定価2100円(5%税込)

■ 詩集『ソシオグラム』
谷本州子/著

詩人の、農事への無心の情熱と愛情、農事そのものへのこころの深さとゆたかさ、つまり、それはそのまま、広く人間愛にもつながっていることに惹かれるのだ。端的にいえば、新鮮な視野を持って、農事を感動しつつ作業する、りっぱな農民詩人ではないか、ということである。
(伊藤桂一「栞」より)

ISBN978-4-8120-1805-7 C0092 定価2100円(5%税込)

■ 詩集『月光苑Ⅱ』
大原鮎美/著

293
おおきな煙突の廃工場
汚染された土は永遠に使えない
車椅子にはサボテン
目の前の海はこんなに澄んでいるのに

294
地下鉄の喫茶室
椅子の根元に
偽画家出没と
モンタージュが括りつけてある
『月光苑Ⅱ』より

ISBN978-4-8120-1804-0 C0092 定価1680円(5%税込)

■ 詩集『野の声が聞こえる』
立川健一/著

ややもすれば現代のわれわれが失いつつある生きている者への信頼――この「詩の源泉」ともいうべきものが立川君の原動力になっているのである。これがもしも壊されるとき、立川君の詩はそれこそ観念ではない労働者の怒りをこめるだろうと思う。
(菅原克己)

ISBN978-4-8120-1796-8 C0092 定価1470円(5%税込)

■ 詩集『風がさそう時』
倉田武彦/著

戦後の激動を市井の技術者として生き抜いた詩人は、今ふるさとの畑で野菜と果樹作りに精を出す。
大地を耕すことは、五感を開いて、いのちの歌に耳をすますことだ。詩を書くことは、心という樹木の幹に、歳月の教えてくれた「本当の言葉」を刻みつけることだ。
(一色真理)
ISBN978-4- C00  定価 円(5%税込)

■ 新・世界現代詩文庫9『現代世界アジア詩集』
水崎野里子/編訳

そして あなたが低く低く沈んで行き
時には 岩の底まで辿り着いても
そこに居続けてはならない 諦めてはならない
踏みしめ 浮き上がり そして自分に言うのよ
再び今 新しいコーヒーをポットで沸かす時だと
エルマ・D・フォティカーム「コーヒー?……コーヒー?」より

『現代アメリカアジア系詩集』から『現代世界アジア詩集』へ。その変遷はアジアの詩への着目と積極的な受容という世界的な変遷でもある。その変遷の中で今、特に日本と中国の詩活動への世界的な期待がある。現在日本の詩人に求められることは、国際的な詩の状況の中でのその認識と、相応する「アジア」の中の「日本の詩」のアイデンティティの明確な確立であろう。(水崎野里子・解説より)
ISBN978-4-8120-1802-6 C0192 定価1470円(5%税込)

■ 詩集『黄昏の陽だまり』
中村泰三/著

今日 誰の瞳にも眩しい空
誰の瞳にも限りなく青い空
その果てに
何が生まれ
何が帰ってゆくのか
「空の果てに」より

ISBN978-4-8120-1795-1 C0092 定価2625円(5%税込)

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